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既存事業の強化

事業が事業拡大を行う目的は「利益の向上」と「市場規模の拡大」に他ならないものでしょう。 しかし具体的なビジョンを持たずにやみくもに規模を大きくしようとしても、いざ事業を拡大した時に痛い目を見てしまうのは明白です。

事業拡大は、大きく分けて2つあります。 一つ目は既存事業の強化(市場浸透戦略)、そしてもう一つは新規事業の展開です。

①既存事業強化のための事業拡大
まず、既存事業の強化(市場浸透戦略)の基本的な考え方を見てみましょう。
既存事業の強化とは、すでに事業を展開している分野で、既存の製品やサービスの売り上げを増やそうとする戦略です。
つまり、「既存市場」で「既存製品」を販売することで、より業績を伸ばそうと目指すのが既存事業の強化です。既存事業の強化は、「製品」と「市場」という2つの軸から最適な経営戦略を導き出すフレームワーク「アンゾフの成長マトリクス」に出てくる経営戦略の一つです。
アンゾフのマトリクスでは、製品と市場の状況に応じて下記4つの経営戦略のうちいずれかを採用します。

②新規事業の展開
はじめに、新規事業プランの評価を行います。
その評価の軸として、非常に有効なものが「市場の魅力度」と「自社との適合度」の二つです。
市場の魅力度は、さらに二つの軸に分けて考えると理解しやすくなります。
一つ目の軸は「想定される市場規模の大きさ」、二つ目の軸は「市場の成長性」です。
想定される市場規模が大きいということは、その新規事業が成功した場合、大きな売上・利益をもたらす可能性が高いということを意味しており、次世代の成長の柱を作るという点では、ある程度の規模が見込まれる市場を選ぶ必要があります。

よくある質問の中に、「ニッチな市場から入って行った方がいいのではないのか?」という考え方もあり得るかと思いますが、それは、新規事業が目標とする売上額がどの規模なのかが大きく関係します。
次世代の柱となる事業を創るという点を考えると、たとえニッチから入ったとしてもその市場から横展開が可能で、トータルで考えると大きなビジネスになり得るかどうかを考えることが必要となります。
また、市場の成長性も極めて重要な要素となります。
成長率が高い市場では、市場の伸びが後押しとなって、事業自体をより成長させやすくなります。
当然、競合他社が参入してくるというデメリットもありますが、市場の成長から来る事業の後押し効果はそのデメリットを十分にカバーしうるメリットと言えます。
逆に、現状の市場規模がある程度あったとしても、マイナス成長の市場であれば新規事業を立ち上げることは極めて難易度が高くなります。
市場規模がある程度あるということは、既にプレイヤー(競合他社)が一定数存在すると考えられ、縮小していくパイ(市場)をこれらの競合他社と取り合うということになります。新規事業として参入して、この競争に打ち勝つこと自体も簡単ではありませんが、仮に競争に打ち勝ち、短期的にある程度成功できたとしても、将来的には市場が縮小していくということを考慮すれば、成功してもその見返りは大きくなく、次世代の柱となる事業にはなりにくいというのが現実です。
また、将来的に外部投資家から資金調達を考えている場合、成長市場でビジネスを作ることは必須となります。
VCなどの投資家は、そのビジネスが成長市場にあるかどうかをかなり重要視しています。
縮小市場で戦ってしまうと、外部投資家からの資金調達は難しいと考えた方が良いでしょう。
このように、「想定される市場規模の大きさ」と「市場の成長性」の両方を総合的に評価したうえで市場の魅力度を判断していきます。
また、自社との適合度とは、「自社が所有する経営資源をどの程度活用できるか」と言い換えることができます。
これも「アンゾフの成長マトリクス」のフレームワークを用いて考えることができます。

アンゾフの成長マトリクスは、「製品」と「市場」の二軸を設定し、さらにその二軸を「既存」と「新規」に分けることで4つの象限に分類するもので、企業の成長戦略を4つの形で表しています。
アンゾフの成長マトリクスにおいて、新規事業としての成功確率が相対的に高いのは、「新製品開発戦略」と「新市場開拓戦略」の二つです。
新製品開発戦略とは既存市場に新製品を販売する戦略です。この戦略は、自社の顧客という自社のリソースを活用できるという点で自社との適合度が高いと言えます。既に取引関係がある顧客にダイレクトにアプローチできるという点で、製品が完成してから早い段階で売上が立ちやすく、事業立ち上げ成功の確率は相対的に高くなります。
新市場開拓戦略とは、既存製品を新市場(新しいターゲット)に販売するという戦略です。既に販売実績がある製品を活用できるという点で製品開発のリスクはさほど高くありません。新顧客を開拓しなければならないという点においてハードルはありますが、この戦略も新規事業を立ち上げるうえでの成功確率は相対的に高いと言えます。
一方で、多角化戦略は上記の二つの戦略と比べると適合度は低くなります。多角化戦略とは新製品を新市場に展開する戦略です。この戦略では製品を新しく作って、さらに顧客基盤も一から作る必要があるため相応のリスクをとることになります。この意味では、社内の新規事業ではあるものの、通常のベンチャー企業立ち上げとほぼ同じリスクをとってスタートすると考えて良いでしょう。
ただ、新規事業開発において多角化が全てダメだという訳ではありません。
例えば、対象とする市場の魅力度が極めて高い場合等は検討に値するケースもあります。「チャレンジ領域」という位置づけでリスクが高いことを覚悟したうえであれば取り組む価値も出てきます。また、リスクを下げるためにその市場においてリソースを持つ他社とアライアンスを組むというのも一つの方法です。

新規事業プランを作る際のポイントとして二つの視点をご紹介しました。
一つ目のポイントが「市場の魅力度」。二つ目は「自社との適合度」です。

市場の魅力度とは「想定される市場規模の大きさ」と「市場の成長性」の二つの視点から評価します。
ビジネスを立ち上げる時には「市場規模」だけに注意が行きがちで、もちろん市場規模も重要な要素ではあるのですが、新規事業として参入していく場合には、「市場の成長性」も、重要な指標として考える必要があります。
自社との適合度についてはアンゾフの成長マトリクスを活用して解説しました。
新規事業をする際に成功確率が相対的に高い戦略は新製品を既存顧客に提供する「新製品開発戦略」と 既存製品を新しい市場に提供する「新市場開拓戦略」の二つです。
以上に述べた通り、「市場の魅力度」と「自社との適合度」を考慮することで成功確率が高い新規事業プランを作ることが可能になります。成功確率という点で考えれば市場の魅力度と自社との適合度の両方が高い領域で新規事業を立ち上げるのが大原則となります。

事業拡大を確実に成功させるため、新規事業の準備や対策は戦略的に進めていくことが大切です。

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